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夕暮観覧車
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―ガコンッ

係員が観覧車の扉を閉めた。

ゴンドラは少しずつ地面から離れていく。


私の目の前には今日一日無口だった先輩が座っている。元々無口な人だけど、今日はいつも以上に無口だった。



「遊園地なんてつまらなかったですよね。無理に誘ってすみませんでした…」



そう言った私は、ハハハ…と力無く笑った。




私はいつもそう。
自分のことでいっぱいいっぱいになって、相手のことなんて考えられず、自分のペースで突っ走る。



今日だって私が先輩を無理に誘った。



大学に進学する先輩は明日で県外に出てしまう。



会うなら今日しか無かったから。
次はいつ会えるのかわからないから。



それなのに結局、迷惑をかけただけだった。



なんだか虚しくなった私は窓の外を眺めた。すると、急に目頭が熱くなり、オレンジ色の町並みが、じわっとぼやけた。





「…でも、楽しかったよ」



突然口を開いた先輩に驚いた私は、思わず先輩を見た。



視線を足元に落としたまま、先輩はゆっくりと言った。


「楽しかったけど…楽しければ楽しいほど…離れるときに辛くなるじゃん…それが嫌」


「だ…だから、今日一日無口だったんですか?」

先輩はコクリと頷く。


まるで、子供のような理由に私は思わず笑ってしまった。



「寂しくないの?」


先輩は視線を上げて尋ねた。


「寂しいですけど、先輩も同じ気持ちだとわかったら、離れてても大丈夫な気がしてきました」

私はニッコリと笑って答えた。


「そっか…大丈夫…」

先輩はそう呟くと突然

「ね、左手貸して?」

と言ってきた。

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