SS 1/2ページ目 ―ガコンッ 係員が観覧車の扉を閉めた。 ゴンドラは少しずつ地面から離れていく。 私の目の前には今日一日無口だった先輩が座っている。元々無口な人だけど、今日はいつも以上に無口だった。 「遊園地なんてつまらなかったですよね。無理に誘ってすみませんでした…」 そう言った私は、ハハハ…と力無く笑った。 私はいつもそう。 自分のことでいっぱいいっぱいになって、相手のことなんて考えられず、自分のペースで突っ走る。 今日だって私が先輩を無理に誘った。 大学に進学する先輩は明日で県外に出てしまう。 会うなら今日しか無かったから。 次はいつ会えるのかわからないから。 それなのに結局、迷惑をかけただけだった。 なんだか虚しくなった私は窓の外を眺めた。すると、急に目頭が熱くなり、オレンジ色の町並みが、じわっとぼやけた。 「…でも、楽しかったよ」 突然口を開いた先輩に驚いた私は、思わず先輩を見た。 視線を足元に落としたまま、先輩はゆっくりと言った。 「楽しかったけど…楽しければ楽しいほど…離れるときに辛くなるじゃん…それが嫌」 「だ…だから、今日一日無口だったんですか?」 先輩はコクリと頷く。 まるで、子供のような理由に私は思わず笑ってしまった。 「寂しくないの?」 先輩は視線を上げて尋ねた。 「寂しいですけど、先輩も同じ気持ちだとわかったら、離れてても大丈夫な気がしてきました」 私はニッコリと笑って答えた。 「そっか…大丈夫…」 先輩はそう呟くと突然 「ね、左手貸して?」 と言ってきた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |