ＳＳ
ね、ゆるしてよ1/2ﾍﾟｰｼﾞ目
「あと何分ぐらい？」
イライラとした口調で尋ねる
「んー…わかんない」
携帯の向こう側で彼はへらへらと答えた
「はぁ？いい加減にしてよー
何分遅刻する気？」
「ごめんごめん」
どうしてこいつは30分も遅刻しておいてこんな振る舞いが出来るのだろう
「もー、5分以内に着かなきゃ帰るから」
そう言って私は電話を切った
「久々のデートなのになぁ…」
私の彼氏は電車に乗り遅れたらしい
かなり田舎の路線であるため、30分に一本のペースでしか電車はこないという
駅のベンチに座っている私の前を、何組かのカップルが通り過ぎて行った
今頃は映画を見ていたはずなのになぁと思いため息をつく
時計を見ると、いつの間にか5分が経っていた
しかし、彼の姿は見当たらない
―今から30秒以内に着いたら許してやろう
―とりあえずあと1分だけ待ってみよう
―もう1分待ったら来るかも
なかなかベンチから立ち上がれずにいると
「あ、待っててくれたんだ」
と、聞き慣れた声がした
顔をあげると彼がいた
「今帰ろうとしたとこ」
と、私は無愛想に言った
「でも5分以上待っててくれたじゃん」
そう言いながら彼は私の隣に腰を下ろす
「うるさいな。とりあえず謝りなさいよ」
「え？あぁそっかそっか。遅刻してごめんね」
「やだ。許さない」
「なにそれー。許してよ」
そんなへらへら笑いながら謝られて許す奴がどこにいると思ってんだ
「絶対いやだ。許さない」
「しょーがないなぁ。じゃあこれあげるよ」
機嫌のなおらない私に、彼が差し出したのは一本のペロペロキャンディだった
「何？これ。こんなんで許すと思ってんの？」
「えー俺なりに考えたお詫びだったんだけどな…」
ここで初めて彼が沈んだ
どうやらキャンディは本気だったらしい
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