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桃と蜜柑
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オレンジ色の光が差し込む放課後の校舎。
階段に座り込む二つの影と、静かに響く押し殺したような泣き声。


忘れ物に気付いた私が教室に戻ると、そこには他のクラスの子と抱き合っている彼氏の姿があった。
当然のように修羅場に突入し、最終的に私はあいつの頬に平手打ちをかまして教室を飛び出した。
その時、偶然通り掛かった部活の後輩悠紀くんに遭遇した。

―ついさっきのことだった。


「ごめんね…なんか…急に泣いたりして…」

「い…いや、全然気にしないで下さいっ」

背中をさすってくれていた手がパッと私から離れた。
そして、申し訳なさそうに呟いた。

「あっあの…実は…全部聞いてたんです。廊下で」

「あ…そうだったんだぁ。なんか格好悪いとこ見られちゃったなぁ…」

私が力無く笑うと、悠紀くんは

「沙織先輩は格好悪くないですっ!!格好悪いのはあの男ですっ!!」

と、私を見て力強く言った。が、そのあと何かに気付いたように口を手で覆った。

「すっすみません!!先輩の彼氏なのに…!!どうしよう…すみません!!」

その慌てっぷりと、さっきの言葉との差が可笑しくて、私は思わず吹き出した。

「気にしないでいいよ。あいつはもう彼氏と思ってないし。というか、さっき振ってきちゃったから」

そう言うと、悠紀くんは少し安心したようだった。


「そろそろ帰ろっか」

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